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早稲田大学が180Gbit/sの超高速光送信器を開発:AIデータセンターの電力消費を「光」で削減する

早稲田大学が180Gbit/sの超高速光送信器を開発:AIデータセンターの電力消費を「光」で削減する

早稲田大学が180Gbit/sの超高速光送信器を開発:AIデータセンターの電力消費を「光」で削減する

生成AIの普及で、データセンターが消費する電力は年々増え続けている。そんななか、早稲田大学理工学術院の北智洋(きたともひろ)教授の研究グループが、データセンター間の通信を大容量化しながら消費電力を大幅に抑えられる小型の光送信器を開発したと発表した。約0.6ボルトという低い電圧で駆動し、最大180Gbit/sの超高速通信を実現するという。研究の成果は2026年10月7日、国際学術誌「IEEE Journal of Lightwave Technology」のEarly Accessとしてオンライン公開された。

開発された光送信器の中身:2つの技術を一つに

今回開発されたのは、波長を変えられるレーザ光源と、電気信号を光信号に変換する高速光変調器を一体化した小型の光送信器だ。レーザには光の損失が小さく安定した動作に適したシリコンフォトニクス技術が使われている。一方の光変調器には、低い電圧で高速に動作できる薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)が採用された。

波長可変の範囲は1529.1〜1595.8ナノメートル、約67ナノメートルにわたる。光通信で広く使われるCバンドの全域を含んでおり、さまざまな波長を使う光通信システムに柔軟に対応できる設計だ。さらに、レーザを一定の温度に保つための冷却制御が不要で、安定して動作することが確認されている。冷却装置がいらない分、部品点数の削減や小型化にもつながる。

これまでシリコンフォトニクスによる小型の波長可変レーザと、薄膜LNによる高速・低電圧の光変調器は、それぞれ研究開発が進められてきた。しかし異なる材料で作られたデバイスを一体化し、高速通信、小型化、低消費電力化を同時に実現することが課題だった。研究グループは両デバイスの波長に対する特性をあらかじめ協調して設計する手法を開発し、余分な光部品や複雑な制御を追加することなく、両者を直接一体化して安定に動作させることに成功したという。

なぜ「0.6ボルト」が大きな意味を持つのか

高速通信の実験では、光変調器を約0.6ボルトという低い電圧の電気信号で駆動し、最大180Gbit/sの光信号を生成することに成功した。高速光変調器では通常、数ボルト程度の駆動電圧が使われる。たとえば3ボルトで駆動する場合と比べると、同じ電気回路の条件では駆動に必要な電力は電圧の二乗に比例するため、0.6ボルトでは理論上およそ25分の1まで低減できる計算になる。

データセンターでは膨大な数の光送信器が使われるため、1台あたりの消費電力を下げられる意味は大きい。1台の削減幅が小さく見えても、数千、数万の規模で並ぶ現場では、合計の電力削減効果が無視できない水準に達する。

また、今回用いられた二値変調では、180Gbit/sは1秒間に1800億回という速さで光信号を切り替える180Gbaudに相当する。現在広く普及している400G級のデータセンター間通信では約60Gbaudの信号速度が用いられており、本研究ではその約3倍の信号切り替え速度を実証したことになる。

AI時代のデータセンターが抱える電力の壁

背景にあるのは、生成AIの急速な普及だ。データセンター間でやり取りされる情報量は急増しており、大容量のデータを高速かつ低消費電力で伝送する光通信技術が求められている。

大容量の光通信では、1本の光ファイバに異なる波長の光を多数通して同時に情報を送る「波長多重通信」が利用される。そのため、必要な波長を自由に選べるレーザと、電気信号を高速に光信号へ変換する光変調器が欠かせない。一方で通信容量の増大に伴い、多数の光部品を小さなチップ上に集積する必要があり、さらにデータセンターでは膨大な数の光送信器が使われるため、1台あたりの消費電力を小さくすることも求められる。

国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2030年の世界のデータセンター消費電力は約945テラワット時に達し、2024年の約2倍に膨らむとされる。電力の確保がデータセンター建設のボトルネックになりつつある現状では、通信1ビットあたりの消費電力を下げる技術の価値は今後さらに高まりそうだ。

「冷却不要」がもたらす設計の自由度

見落とされがちだが、「レーザの冷却制御が不要」という点も実用上の意味が大きい。従来の光送信器では、レーザの発振波長を安定させるために温度を一定に保つ冷却機構が欠かせなかった。冷却は電力を消費するだけでなく、部品点数や実装面積を増やす要因でもある。

冷却が不要になれば、装置の小型化と高集積化が進み、1台の機器に詰め込める光送信器の数を増やせる。データセンターのラックあたりの通信容量を上げながら、冷却設備への投資を抑えられる可能性がある。省電力は運用コストの削減に直結するため、データセンター事業者にとって導入の動機になりやすい。

実用化に向けた課題と今後の展望

今回の成果は研究段階の実証であり、実際にデータセンターに導入されるまでには、量産性や長期の信頼性、コストといった課題の検証が必要になる。早稲田大学の発表は実験室レベルの実証であり、製品化の時期や具体的な導入計画は示されていない。

ただ、異なる材料の長所を組み合わせる設計手法そのものに価値がある。シリコンフォトニクスの安定性と薄膜ニオブ酸リチウムの高速・低電圧動作を両立させた今回のアプローチは、光送信器以外の光集積回路にも応用できる可能性がある。AI時代のデータセンター間通信(DCI)の大容量化や低消費電力化に加え、光通信装置の小型化・高集積化への貢献が期待される。

Frequently Asked Questions

この光送信器はどのような仕組みで省電力を実現していますか
波長可変レーザと薄膜ニオブ酸リチウムの光変調器を一体化し、約0.6ボルトという低い電圧で駆動できる点が鍵です。駆動に必要な電力は電圧の二乗に比例するため、従来の3ボルト駆動と比べて理論上およそ25分の1まで低減できる計算になります。さらにレーザの冷却制御が不要なため、冷却に使う電力も削減できます。

180Gbit/sはどれくらい速いのですか
1秒間に1800億回という速さで光信号を切り替える180Gbaudに相当します。現在広く普及している400G級のデータセンター間通信で使われる約60Gbaudのおよそ3倍の信号切り替え速度です。67ナノメートルという広い波長範囲で動作するため、波長多重通信のさまざまな波長に柔軟に対応できます。

いつ実用化されますか
研究段階の実証であり、製品化の時期は公表されていません。実用化には量産性や長期信頼性、コストの検証が必要です。研究成果は2026年10月7日に国際学術誌でオンライン公開されたもので、今後の技術移転や企業との連携が注目されます。

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