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日本のAIチップスタートアップLENZO、独自アーキテクチャの設計完了 試作製造には数十億円が必要

日本のAIチップスタートアップLENZO、独自アーキテクチャの設計完了 試作製造には数十億円が必要

日本のAIチップスタートアップLENZO、独自アーキテクチャの設計完了 試作製造には数十億円が必要

AIの世界では、モデルの話題ばかりが注目されがちです。でも、そのモデルを実際に動かすチップを作る会社が、日本にもあります。2024年に創業したAIチップスタートアップのLENZOが今週、独自アーキテクチャのAIアクセラレータ「LENZO A Series」の設計を完了したと発表しました。設計はできた。でも、本当の戦いはこれからです。試作を作るだけで数十億円がかかるというのです。

設計が終わった「LENZO A Series」とは

報道によると、LENZOは自社開発のCGLAアーキテクチャをベースにしたAIアクセラレータ「LENZO A Series」の設計を完了し、製造に向けた準備を進めています。2026年10月13日から16日に開催されたCEATEC 2026にも出展し、自社のAI処理技術を使ったデモを披露しました。

狙うのは、消費電力5~10ワットで65TOPS(INT8)の演算性能です。TOPSとは1秒間に何兆回の演算ができるかを示す指標で、65TOPSは65兆回に相当します。ただし、これは設計段階の目標値であり、第三者機関が量産チップを評価した結果ではないことに注意が必要です。AI推論の実際の性能は、数値精度やメモリ帯域、モデルの構造にも左右されるため、TOPSだけでは他社の製品と単純に比較できません。

創業者の顔ぶれが異色:元プレステ開発者と大学教授

LENZOは2024年の創業です。創業者の一人、藤原健真氏は、ソニーでPlayStation 2やPlayStation 3の開発に携わった経歴の持ち主です。もう一人は奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の中島康彦教授。ゲーム機の設計現場と大学の研究室という、異なる世界から生まれたスタートアップです。

本社は奈良県生駒市。東京のスタートアップ集積地ではなく、関西から世界に挑む姿勢も、この会社の個性を表しています。

技術の核心:CGLAアーキテクチャとは

A Seriesの心臓部は、中島教授らがNAISTで研究してきたCGLA(Coarse-Grained Linear Array)アーキテクチャです。処理素子を1列に並べてデータを渡していく構造で、無駄なメモリアクセスを減らす設計思想が特徴です。CGRAという再構成可能な演算回路の研究系統に属し、コンパイラとの協調設計で高速なコンパイルを目指していると報じられています。

過去には120nmプロセスでシリコンの試作経験もあるとされていますが、今回のA Seriesは4nmや8nmといった先端プロセスでの製造を検討中とのことです。TSMCを含むファウンドリと協議していますが、プロセスや製造委託先はまだ正式に決まっていません。メモリは最大64GBのLPDDR4、ホスト接続はPCIe Gen3、標準的なLinux環境をサポートする予定です。

試作だけで数十億円:「お金が足りない」が本当の課題

藤原氏によると、A Seriesのサンプル製造だけでも数十億円が必要だといいます。先端プロセスのマスク、EDAツール、IP、物理設計、検証、パッケージ、テスト。チップの開発は工程ごとに費用が積み上がります。サンプル出荷は2027年後半を目標としていますが、これはあくまでサンプルの話で、量産開始ではありません。

興味深いのは、2026年3月にLENZOが約5億円を調達した際、「初のオリジナルシリコンの製造」に充てると発表していたことです。それから7か月後に「試作だけで数十億円」という話が出てきたわけです。先端ノードのコストを考えれば不思議ではありませんが、当初の5億円がどこまでの工程を想定していたのか、資金計画が変わったのかは、公表情報からは読み取れません。

現在、同社は資金調達を進めながら、製造委託先との契約、実シリコンでの性能検証を次のステップに据えています。

CEATECで見せたもの、見せていないもの

CEATEC 2026では、TokenProcessorボードとソニーのカメラを組み合わせたVLA(Vision-Language-Action)システムをデモしました。VLAは画像などの視覚情報と言語の指示を組み合わせて、機械やロボットの動作を制御するAI技術で、エッジでAIを動かすロボットや産業機器への応用が期待されています。

ただし、このデモに使われたのは既存のTokenProcessorボードであり、完成したA Seriesのチップではありません。この点はLENZO自身の発表でも明確にされています。展示の華やかさと、実際にシリコンがあるかどうかは、別の話として見る必要があります。

日本のAI半導体、存在感を出せるか

LENZOの挑戦を語る上で欠かせないのが、周囲の競争環境です。エッジAIの市場にはすでにNVIDIA、Qualcomm、Hailoといった強力なプレイヤーがおり、中国のSoCメーカーが低コスト製品を供給しています。2027年後半にサンプルを出す計画は、後発として決して楽ではありません。

一方で、日本では光技術の連携を強化する日本フォトニクス工業会(JPIA)の設立など、半導体周辺の動きも活発です。国産AIへの1兆円規模の支援が議論される中で、LENZOのような設計ベンチャーが実シリコンにたどり着けるかどうかは、日本のAI半導体の試金石になるかもしれません。

設計の完了は本物の前進です。でも、ファウンドリとの契約、資金の確保、実シリコンでの性能実証、そして何より「この技術を使いたい」とお金を出す顧客。チップビジネスで問われるのは、設計図ではなく、その先のすべてです。

Frequently Asked Questions

LENZOのA Seriesはいつ買えますか?

サンプル出荷は2027年後半を目標としていますが、これはあくまでサンプルであり、量産開始ではありません。製造委託先も資金もまだ確定していないため、購入時期について具体的な発表はありません。

65TOPSという性能は、他社の製品と比べてどうですか?

65TOPS(INT8)という数字は設計段階の目標値で、量産チップを第三者が評価したものではありません。AI推論の実効性能はメモリ帯域や数値精度、モデルの構造にも左右されるため、この数字だけでNVIDIAやQualcomm、Hailoの製品と比較することはできません。実シリコンでの検証データが待たれます。

LENZOに出資している企業はありますか?

2026年3月にインキュベイトファンド、ソニーイノベーションファンド、三菱UFJキャピタルなどから総額約5億円を調達したと発表しています。現在は試作製造に向けた追加の資金調達を進めていると報じられています。

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