×

HODL1、機密情報を守る「AIセキュリティ対策エージェント」を共同開発へ:AIエージェントの外部送信をソフトで止める

HODL1、機密情報を守る「AIセキュリティ対策エージェント」を共同開発へ:AIエージェントの外部送信をソフトで止める

HODL1、機密情報を守る「AIセキュリティ対策エージェント」を共同開発へ:AIエージェントの外部送信をソフトで止める

企業の仕事にAIエージェントが入り込むほど、扱う情報の重みも増していく。請求書の照合や決算の集計といった業務では、財務データや取引先情報が日常的にAIの手に渡る。便利さの裏側で、外部のAIサービスへ情報が流れ出す心配や、悪意ある指示にAIが従ってしまう心配も大きくなる。2026年11月2日、株式会社HODL1はこの課題に正面から向き合う発表をした。スイスの暗号技術企業Ryodan Systems AGと提携し、機密情報の漏えいを防ぐ「AIセキュリティ対策エージェント」の共同開発を始めるという。

発表の要点:何が始まるのか

HODL1は東証スタンダード市場に上場する企業で、代表取締役CEOは田原弘貴氏だ。社員2名という小さな体制で、上場対応や人事労務を含む管理業務を運営している。同社は自社の管理業務で1年以上にわたりAIエージェントを構築し運用してきた経験を持ち、2026年5月8日からは「AI経営管理エージェント」を外部向けに提供している。経営ダッシュボードや仕訳連携、連結決算、内部監査サポートといった機能を通じて、顧客企業の経営管理業務を支援するサービスだ。

今回の共同開発では、この実務経験に、Ryodanの情報保護技術を組み合わせる。対象となるのは、オープンソースのAIエージェント「Hermes」向けに開発されたセキュリティソフト「Mordred」だ。まずHODL1社内で試験運用を行い、その結果を踏まえて既存サービスへの統合と、幅広い企業業務への展開を目指すとしている。提供開始時期や価格、共同開発の条件は、協議と検証を踏まえて定める方針で、現時点では未定だ。

なぜ今、AIエージェントのセキュリティなのか

AIエージェントは、依頼された仕事に必要な情報を集め、複数のソフトウェアを使いながら作業を進めるAIだ。たとえば請求書の内容を会計データと照合し、担当者が確認すべき項目をまとめるといった使い方が想定されている。任せる範囲が広がるほど、AIは財務情報や取引先情報といった企業の重要な情報に触れる機会が増える。

ここで問題になるのが二つのリスクだ。一つは、外部のAIサービスへの情報漏えいだ。AIが処理のために情報を外部へ送れば、その情報がどこでどう扱われるかが見えにくくなる。もう一つは、悪意ある指示による誤った操作や送信だ。プロンプトインジェクションと呼ばれる手法では、外部から紛れ込んだ指示にAIが従い、本来してはいけない操作や送信をしてしまう恐れがある。HODL1の発表は、こうしたリスクはAIへの指示だけでは防ぎきれず、企業が仕組みとしてサイバーセキュリティ対策を整備することが欠かせないと指摘している。

Mordredの仕組み:送信先の制限と暗号化

Mordredは、Nous Researchが公開するオープンソースのAIエージェント「Hermes」にプライバシー保護機能を追加するプラグインだ。Hermesは情報収集やファイルの操作、外部サービスとの連携など、複数の作業を組み合わせて実行できるエージェントとして広く利用されている。Nous Researchは2026年10月にNVIDIAやMicrosoftのM12などから9,000万米ドルの資金調達を公表しており、同社によるとHermesのソフトウェアが複製された回数は2026年10月時点で2,400万回を超えるという。

Mordredの役割は、AIへの指示に加えて、ソフトウェア側で接続先や保存情報を管理することだ。設定した条件に合わないAIへの接続を止め、対応する保存領域の情報を暗号化し、通信経路を管理する機能を備えている。たとえば社内で動くAIだけに処理を限定する設定を使えば、Mordredが管理するAI呼び出しの外部送信を止める設計が可能になる。端末に保存する対応データには暗号化が適用される。

厳格な設定では、管理対象のAIへの接続が許可条件を満たさない場合、送信そのものが止まる。つまり「機密情報を外部に送らない」という指示をAIに伝えるだけでなく、送れない構成をソフトウェアで作るわけだ。さらに、対応する保存情報を暗号化することで、保存ファイルを取得された場合でも内容を読まれるリスクを抑える。送信先の制限で持ち出しを抑え、暗号化で保存情報を守り、人の確認で重要な操作を管理するという、異なる役割の対策を重ねる考え方だ。

HODL1の役割:実務の知見を組み込む

技術だけでは現場の業務は回らない。HODL1が持ち込むのは、決算や経理、内部監査といった、実際に機密情報を扱う業務で培った知見だ。同社はAIが実行できる操作の範囲と、人の承認が必要な操作を業務ごとに定める方針を示している。重要な操作は人が確認し、それ以外はAIに任せるという線引きを、業務の実態に合わせて設計する狙いだ。

試験運用では、当社内の対象業務を限定し、業務品質や運用費用に加えて、セキュリティ対策の有効性を重点的に検証する計画だ。機密情報の意図しない外部送信や、悪意ある指示による操作を想定し、送信先の制限や人による承認が機能するかを確認する。暗号化の対象と保護範囲も確認し、その結果を踏まえて「AI経営管理エージェント」への統合と顧客企業への提供内容を具体化する。試験運用で判明した課題を改善し、保護できる情報と運用条件を明確にしたうえで、顧客企業への展開を進める方針だ。

視野の先:推論サービスとの組み合わせ

発表には、もう一段先の構想も含まれている。AIエージェントが仕事を実行するたびに、AIモデルが情報を処理する「推論」が必要になる。企業の業務にAIエージェントが定着すれば、日常の仕事に伴う推論サービスの継続利用につながる。同社は将来的に、AIエージェントと推論サービスを組み合わせて提供する事業を目指すとしている。AIの利用量を管理し、複数のAIモデルへの接続をまとめるLLMゲートウェイや、GPUを用いた推論基盤との統合を検討するという。ここでいうAIトークンは、AI推論サービスの利用枠を指し、顧客の利用需要と採算性を確認しながら、調達や販売への展開を検討するとしている。

読者が押さえておきたいポイント

この発表は、完成した製品の発売ではなく、共同開発の開始だ。提供時期や価格はこれから決まる。とはいえ、示された方向性は企業ユーザーにとって示唆に富む。AIの利用を広げる際は、便利さだけでなく、情報がどこへ送られるか、誰の承認で操作が進むか、保存された情報がどう守られるかという三つの問いを、導入前に確認しておきたい。HODL1の取り組みは、まさにその三つをソフトウェアと運用の両面から固めようとするものだ。試験運用の結果がどう出るか、そして既存サービスへの統合がどのような形になるか、今後の発表に注目したい。

Frequently Asked Questions

AIセキュリティ対策エージェントとは何ですか

HODL1とRyodan Systems AGが共同開発を始めた構想で、AIエージェントが扱う機密情報の漏えいを防ぐことを目的としています。オープンソースのセキュリティソフトMordredの情報保護機能と、HODL1の経営管理業務の知見を組み合わせる計画です。

Mordredはどのように情報を守るのですか

AIへの指示に加えて、ソフトウェア側で接続先や保存情報を管理します。設定した条件に合わない接続を止め、対応する保存領域の情報を暗号化し、通信経路を管理します。社内で動くAIだけに処理を限定する設定では、外部への送信を止める設計が可能です。

いつ、どのような形で利用できるようになりますか

現時点では共同開発の開始段階で、提供開始時期や価格は未定です。まずHODL1社内での試験運用を行い、その結果を踏まえて既存のAI経営管理エージェントへの統合と顧客企業への展開を具体化する方針です。

Post Comment