半年で延べ2億6000万人分:日本で個人情報漏えい報告が急増した理由と今すぐできる対策
2026年10月29日、個人情報保護委員会が公表した数字は、多くの人の目を引いた。2026年4月1日から10月16日までに、民間事業者から報告された不正アクセスによる個人情報の漏えい、または漏えいの恐れがある事案の対象者数が、延べ約2億6000万人に達したというのだ。日本の総人口の2倍以上にあたる規模である。ただし、この数字を正しく読むためには、いくつかの注意点がある。延べ人数には重複が含まれており、同じ人が複数の事案で数えられている可能性がある。また、実際に漏えいした事案だけでなく、漏えいの恐れがある事案も含まれている。それでも、報告件数そのものが急増している事実は重い。個人の情報を守る仕組みが、今まさに試されている。
報告件数は10月に急増した
公表された資料によると、期間中の報告件数は合計2094件だった。月別に見ると、4月は166件、5月は163件とほぼ横ばいだった。6月から8月にかけては185件、212件、235件と緩やかに増えた。そして9月は303件、10月は16日時点で830件に達した。10月は半月で9月の約2.7倍である。1日当たりの報告件数も、9月の約10件から10月は約52件へと5倍以上に増えた。期間中の全体のうち、10月の報告件数は約4割を占める。
この急増をどう解釈すべきだろうか。一つの可能性は、実際に攻撃や漏えいが増えたことである。別の可能性は、事業者側の報告体制が整い、これまで見えていなかった事案が表面化したことである。報道によると、個人情報保護委員会の担当者は事態を深刻に受け止め、漏えいした事業者への調査と情報管理の改善指導を進める考えを示している。原因がどちらであっても、利用者にとっての結論は同じである。自分の情報がどこかで漏れている可能性を前提に、備えを整えておくことが大切だ。
漏えいの規模が大きい事案も増えている
規模別に見ても、変化ははっきりしている。漏えいした個人情報の規模が1000万人を超える事案は、8月と9月が各1件だったのに対し、10月は4件に増えた。100万人超から1000万人以下の事案も、10月は18件に上り、8月と9月の各4件から大幅に増えている。100万人を超える事案は、期間全体で20件を超えたと報じられている。
大きな事案が増えると、影響は一つのサービスだけにとどまらない。同じメールアドレスや同じパスワードを複数のサービスで使い回している人は、一つの漏えいで複数のアカウントが危険にさらされる。氏名や住所、電話番号、メールアドレスといった基本的な情報が組み合わさると、詐欺メールやなりすましの材料にもなる。だからこそ、漏えいのニュースを「どこか遠い会社の話」として流さず、自分のアカウントの棚卸しをするきっかけにしたい。
別の調査も同じ傾向を示している
個人情報保護委員会の集計とは別に、セキュリティー会社の調査も10月29日に報じられた。マクニカの調査によると、2026年1月から10月27日までに公表された情報漏えいなどの件数は延べ3億2900万件あまりに達したという。2025年の1年間の約10倍、2024年の約90倍にあたる規模だとされている。企業や団体が公表した被害の数は、すでに2025年の2.7倍となる224件で、そのうち10月は約半数の109件を占めた。
2つの集計は、対象期間や集計方法が違うため、数字をそのまま比べることはできない。個人情報保護委員会の集計は、民間事業者から同委員会に直接報告された事案に限られ、所管省庁を経由した報告や行政機関などからの報告は含まれていない。一方、セキュリティー会社の調査は、公表された事案を基にしている。それでも、2つの異なる出発点から同じ方向の結論が出ている点は注目に値する。2026年に入って、情報漏えいが目に見えて増えているのだ。
AIによる攻撃の広がりが指摘されている
なぜ、これほど急に増えたのか。報道では、AIの進化が背景の一つとして挙げられている。AIがシステムの弱点を広く探し、無差別に攻撃できるようになった影響が大きいとみられている。従来は人の手間がかかっていた攻撃の準備や対象の選定が、自動化によって速く、広くなった可能性がある。専門家は、年末にかけて監視が緩めば件数がさらに増える恐れがあると警告している。
ここで大切なのは、攻撃の手法が高度化しているからといって、利用者にできることがないわけではないということだ。攻撃者は、弱いパスワードや使い回し、古い設定といった、よくある隙を狙うことが多い。基本的な対策をきちんと行うだけでも、被害に遭う確率を下げられる。派手な対策よりも、地道な基本の積み重ねが効く場面が多いのである。
まず確認したい3つのポイント
まず、自分のアカウントでパスワードの使い回しをしていないか確認しよう。特に、メールアドレスのアカウントと、銀行や買い物のアカウントで同じパスワードを使っている場合は、すぐに分けることをおすすめする。メールは他のアカウントのパスワード再設定に使われることが多いため、メールが乗っ取られると被害が広がりやすい。
次に、二段階認証が使えるサービスでは、できるだけ有効にしよう。スマートフォンの認証アプリや、端末に届く確認コードを使う方法がある。パスワードが漏れても、第二の確認があれば、不正なログインを止められる可能性が高まる。設定は数分で終わるサービスが多いので、よく使うサービスから順に進めるとよい。
そして、身に覚えのないログイン通知や、パスワード変更のメールが届いていないか確認しよう。もし心当たりのない通知があれば、そのサービスの公式アプリや公式サイトから直接ログインし、パスワードを変更し、ログイン中の端末を確認する。メールの中のリンクをそのまま開くのではなく、公式の入り口から入る習慣が、フィッシング詐欺を避けるうえでも役立つ。
漏えいの連絡が来たときの手順
利用しているサービスから「情報が漏えいした可能性がある」という連絡が来たら、落ち着いて手順を踏もう。まず、その連絡が本物かどうかを確認する。公式サイトのお知らせや、公式アプリ内の通知と照らし合わせる。次に、そのサービスと、同じパスワードを使っている他のサービスのパスワードを変更する。さらに、クレジットカード情報が含まれていた可能性がある場合は、カード会社の案内に従い、利用明細をしばらく注意深く確認する。
また、漏えいした情報の種類によって、注意すべき点は変わる。メールアドレスだけなら迷惑メールや詐欺メールに注意する。電話番号が含まれていれば、不審な電話やSMSにも気をつける。住所や生年月日などが組み合わさっている場合は、本人確認を装った連絡に特に注意が必要だ。慌ててリンクを開いたり、個人情報を入力したりしないことが大切である。
事業者と利用者、両方の責任が問われている
今回の数字は、事業者側の管理体制にも光を当てている。報告件数が増えた背景には、攻撃の増加だけでなく、法令に基づく報告の徹底もあると考えられる。個人情報保護法に基づき、事業者は漏えいなどを個人情報保護委員会へ報告する義務を負っている。報告が増えることは、隠さずに公表する姿勢が広がっているとも読める。一方で、そもそも漏えいを防ぐための投資や点検が十分だったかは、今後も問われ続けるだろう。
利用者としては、すべてのサービスを完全に信頼するのでも、すべてを疑うのでもなく、現実的な備えを続ける姿勢が求められる。パスワードを分け、二段階認証を使い、通知に気を配る。これらは特別な知識がなくても始められる対策である。今回の報告は、日本のデジタル社会が大きな転換点に来ていることを示している。自分の情報を守る習慣を、今日から一つずつ整えていくことが、最も確実な対応になるだろう。
Frequently Asked Questions
延べ2億6000万人という数字は、日本人の全員が被害に遭ったという意味ですか
いいえ、そうではない。延べ人数には重複が含まれており、同じ人が複数の事案で数えられている可能性がある。また、実際に漏えいした事案だけでなく、漏えいの恐れがある事案も含まれている。個人が被害を受けた人数そのものを示す数字ではない点に注意が必要だ。
10月に報告が急増した理由は分かっていますか
公表された資料だけでは、単一の理由を断定できない。攻撃の増加と、事業者の報告体制の整備の両方が影響している可能性がある。個人情報保護委員会は事態を深刻に受け止め、調査と改善指導を進める考えを示している。利用者としては、理由の確定を待たずに基本的な対策を進めることが大切だ。
自分の情報が漏れたかどうかは、どうやって確認できますか
利用しているサービスからの公式な連絡や、公式サイトのお知らせを確認するのが確実だ。身に覚えのないログイン通知やパスワード変更の連絡が届いた場合は、公式アプリや公式サイトから直接ログインして状況を確認し、必要に応じてパスワードを変更しよう。メール内のリンクを安易に開かないことも大切だ。



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