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「導入は進んだが、成果はまだ」:デル調査が示す日本企業のAIギャップ

「導入は進んだが、成果はまだ」:デル調査が示す日本企業のAIギャップ

デル・テクノロジーズが2026年10月27日に発表した調査結果は、日本企業の生成AI活用が新しい段階に入ったことを示している。導入そのものは広がったが、成果に結びつける段階では壁が残っているという内容だ。就任間もない同社の新社長も、このギャップに言及している。数字と背景を整理すると、日本企業が次に何と向き合うべきかが見えてくる。

調査の概要と数字

この調査は「Modern Enterprise Readiness Study 2026」と呼ばれるもので、2026年6月に調査会社のVanson Bourneに委託して実施された。対象は世界35カ国の従業員100人以上の組織に属するビジネスやITの意思決定者2950人で、日本からは150人が回答した。調査によると、生成AI活用の初期や中期の段階を脱し、後期段階にある日本企業の割合は、2025年の35パーセントから2026年には58パーセントへ拡大した。アジア太平洋と日本と中国を合わせたAPJCの平均である61パーセントに迫る水準だ。この数字だけを見れば、日本企業のAI活用は着実に前進しているように映る。初期段階の試行錯誤を終え、実務に組み込む企業が増えていることがうかがえる。ただし、調査が同時に示したのは、活用が進むほど新たな課題がはっきりしてくるという現実だった。導入の広がりと成果の実感には、まだ距離がある。

最大の壁はセキュリティと人材不足

調査で最大の障壁として挙げられたのは、セキュリティやコンプライアンス、プライバシーへの懸念だった。日本企業の47パーセントが課題として挙げている。2番目は人材不足で、38パーセントが課題とした。さらに63パーセントは、AIとデータ、セキュリティを横断するロードマップの不足を指摘した。これらを合わせると、課題の中心がAIを導入することそのものから、AIを全社規模で展開して成果につなげる実行の段階へ移っていることが分かる。個別の部署で試験的に使う分には進めやすいが、全社で同じ基準と手順で動かすとなると、話は別になる。どのデータをどの範囲まで使ってよいのか、誰が責任を持つのか、トラブルが起きたときにどう止めるのか。こうした問いに答えられないまま規模を広げれば、リスクだけが大きくなる。だからこそ、多くの企業が慎重になるのだと調査結果は示唆している。

日本の活用領域の特徴

活用領域にも、日本らしい特徴が表れた。APJC全体では「IT自動化やインフラ運用」や「従業員の生産性とナレッジワーク」が上位となった。一方で日本では「データ分析や意思決定支援」が55パーセントで最も高く、「セキュリティや脅威検知」が48パーセントで続いた。意思決定を支える使い方や、リスク管理に関わる領域が上位に並んだ形だ。この傾向は、日本企業の慎重さとも重なる。まずは判断の質を上げるためにAIを使い、守りの領域で効果を確かめてから、業務の自動化へ広げていく。そうした段階的な進め方が読み取れる。また、AI投資の判断基準も変化している。日本企業の72パーセントは「実証されたビジネス成果と明確なリスク管理計画がなければ、新たなAI施策を進めない」と回答した。勢いや話題性ではなく、成果の証拠とリスクへの備えを求める姿勢が強まっている。

効率化止まりを示す公的調査

デルの調査結果は、公的機関の調査とも重なる部分がある。独立行政法人情報処理推進機構が2026年7月に公開した「DX動向2026」によると、AI導入による効果では「業務が効率化したり迅速化した」が91.6パーセントと最も高い。一方で「売上や利益が向上した」は3.9パーセントにとどまる。効率化は進んでも、売上や利益という成果にはまだ結びついていない企業が多いことが分かる。効率化そのものは価値があるが、経営層が投資の継続を判断する材料としては弱い。ここに、AI活用の評価をめぐる難しさがある。人材面の制約も大きい。経済産業省が2026年3月に公開した「2040年の就業構造推計の改訂版」は、2040年に「AIやロボット等の利活用を担う人材」が約340万人不足すると推計している。技術を入れるだけでは足りず、それを使いこなし、現場に定着させる人が必要だという課題が、数字として示されている。

新社長が語った慎重さの背景

2026年8月にデル・テクノロジーズの代表取締役社長に就任したジョン・ロボトム氏は、10月27日の記者会見で調査結果と日本市場への取り組みを説明した。質疑応答では、日本企業が成果創出に慎重な背景について、リスクに対して非常に慎重であり、信頼性が担保されるまで自動化に踏み切りにくい傾向があると語った。そのうえで、海外での先進事例や信頼できるAI基盤の構築手法を提示することで、成果の創出につなげていきたいと述べた。この発言は、日本企業の慎重さを欠点として切り捨てるのではなく、信頼を積み上げる手順として捉えているように聞こえる。デル・テクノロジーズは、実行面の課題に対する支援策として「Dell AI Factory」を挙げている。インフラやデータ基盤、ソフトウェア、サービスを組み合わせ、AIの構想策定から導入、運用、拡張までを支援するアプローチだという。このほか、経営層との対話や検証の拠点となる「Executive Briefing Center」と「AI Innovation Lab」を国内に設置している。導入の段階を終えた企業にとって、次に問われるのは道具の有無ではなく、運用の設計と信頼の作り方だ。今回の調査は、その転換点を数字で示したといえる。

Frequently Asked Questions

デルの調査はいつ、誰を対象に行われたのか

調査は2026年6月に実施され、世界35カ国の従業員100人以上の組織に属するビジネスやITの意思決定者2950人が対象となった。日本からは150人が回答している。結果は2026年10月27日に発表された。

日本企業の生成AI活用はどの程度進んでいるのか

生成AI活用の後期段階にある日本企業の割合は、2025年の35パーセントから2026年には58パーセントへ拡大したと報告されている。APJCの平均である61パーセントに迫る水準で、導入の段階から実活用の段階へ移りつつあることが示されている。

成果につなげるうえでの最大の課題は何か

調査では、セキュリティやコンプライアンス、プライバシーへの懸念が47パーセントで最大の障壁とされた。人材不足が38パーセント、AIとデータとセキュリティを横断するロードマップの不足が63パーセントで挙げられている。課題は導入そのものから、全社規模での実行へ移っている。

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